ブログ 【徹底解説】民泊の許可申請の流れ

民泊の開業に興味があっても、届出の出し方がわからなかったり「自力でできるか不安」と感じたりしている方もいるでしょう。
そこで今回は、民泊の許可申請の流れをご紹介します。細かい流れから必要な書類まで解説しているので、これから民泊を始めたい方はぜひ参考にしてみてください。
目次
民泊新法で許可申請を出す前に知っておきたいこと
民泊新法で届出を出すにあたって、まずは民泊の運営について知っておくべきことがあります。ここでは、営業日数と家主不在型で運営する際の委託に関して解説していきます。
営業日数の制限
まずは、稼働できる日数について必ず知っておきましょう。
民泊新法では、営業できる日数が1年で180日までと定められています。稼働率を高くして利益を上げたいと考えている方も多いかもしれませんが、180日を超えての営業はできないので、注意が必要です。
そのため、限られた日数の中でどのくらい利益を上げられるかがポイントになります。
家主不在型は民泊管理業者に委託する
オーナーが家に住んでいる家主居住型の場合、オーナー自身が管理者となって運営することが可能です。
しかし、居住用の家とは別に民泊用の物件を貸し出す家主不在型は、民泊管理業者に委託する必要があります。
また、家主居住型であっても、一時的な不在が1〜2時間を超えてしまう場合は、家主不在型とみなされる可能性もあるので気を付けましょう。
家主不在型は、自身が住宅宿泊管理業者に登録して運営する方法もあります。
民泊新法の許可申請(届出)の流れ
では、民泊新法の届出の流れを8つのステップに分けて解説します。一つひとつの流れを理解すれば自分で行うこともできるので、ぜひ参考にしてみてください。
1.設備要件と居住要件を確認する
まずは、建物が設備要件と居住要件を満たしているかを確認しましょう。
設備要件
届出をする建物に必要な設備は、以下の4つです。
- キッチン
- 浴室
- トイレ
- 洗面設備
これらの設備は必ず建物に設けられている必要があり、浴室に関しては、銭湯や温泉などの公用浴場で代替することはできません。トイレと浴室、洗面設備はユニットバスでも可能です。お風呂は浴槽がなくシャワーだけでも問題はないので、浴槽がなくても届出はできます。
トイレは和式と洋式どちらでも良いですが、ゲストの使い勝手を考えると洋式がおすすめです。
居住要件
民泊新法で定められている居住要件は、以下の通りです。
- 元に人の生活の本拠として使用されている家屋
- 入居者の募集が行われている家屋
- 随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋
(出典:民泊制度ポータルサイト)
民泊に使用する物件は、上記のうちのいずれかを満たしていなければなりません。具体的には、現在住宅として使われている家や入居者の募集をしている賃貸物件などが当てはまります。
2.転貸が可能か確認する
賃貸物件を利用して民泊をすることを検討している場合は、転貸の許可が必ず必要です。賃貸で住んでいる家をさらに第三者に貸すことは転貸(又貸し)にあたり、賃貸借契約では無断転載が禁止されています。
そのため、物件を所有しているオーナーから民泊の許可を得る必要があるのです。無断で民泊をした場合は、営業ができなくなる可能性が高いので注意しましょう。
3.マンションの管理規約をチェックする
マンションの空き部屋を利用する場合も、管理規約を必ず確認しましょう。マンションによっては、そもそも民泊を禁止しているところもあり、禁止されている場合は運営ができません。
規約に民泊に関しての規定がなくても、トラブルが起きて運営を止められる可能性もあるため、必ず許可を得てから始めることが重要です。
また、口頭で許可をもらうのではなく、証明として残しておくためにも文章で明記してもらいましょう。
4.消防法令適合通知書を交付してもらう
民泊では、消防設備の設置も行います。通常、一般住宅に該当するケースでは住宅用火災警報器を用意しますが、共同住宅や宿泊施設に当てはまる場合は、消火器や誘導灯などの設置も必要になります。
必要な消火設備は、以下のパターンに分けられることが一般的です。
- 戸建て住宅で家主不在か家主居住か
- 共同住宅で家主不在か家主居住か
さらに詳しい設備についてはこちらを参考にしてください。必要な消防設備が揃ったら、消防署から消防法令適合通知書を発行してもらいましょう。
5.必要な書類を用意する
次に、届出の際に提出する書類を準備します。届出には届出書や住宅の図面など、さまざまな書類が必要になります。
準備するのに時間がかかる可能性もあるので、計画を立てて早めに用意を始めるのがおすすめです。必要な書類がわからない場合は、自治体の窓口に相談にいきましょう。用意すべき書類や不明点などを教えてくれます。
6.申請手続きを行う
書類が準備できたら、届出を行いましょう。届け出の際は、書類に記入漏れがないかしっかり確認しておくことも大切です。
また、地域ごとに「開業の◯日前までに届出を行うこと」と定められているため、開業から逆算して準備を進め、余裕を持った手続きを行えるようにしておきましょう。
7.保健所による検査に立ち会う
届出をした後は、保健所がオーナー立ち会いのもと物件の検査を行います。検査では、構造設備の基準をクリアしているかや水回りが重点的にチェックされます。
- 床面積
- トイレや洗面設備
- 排水設備や換気、照明があるかなど
上記のポイントに加えて、感染症を防ぐために水回りの設備も入念に検査されるため、職員から何か聞かれたときにしっかり答えられるようにしておくことが重要です。
8.営業スタート
検査に通れば申請が受理されるので、営業をスタートできます。
準備段階から保健所の検査、届出が受理されるまでの期間は約1ヶ月が目安ですが、検査にかかる時間は地域で異なる場合もあります。
そのため、営業までの時間を短縮したいのであれば、管理業者に申請を委託するのもひとつの方法です。
許可申請で用意する書類
民泊の申請をするにあたって用意する書類は、以下の表の通りです。(個人で申請の場合)
届出書 |
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書 |
未成年者で、その法定代理人が法人である場合は、その法定代理人の登記事項証明書 |
欠格事由に該当しないことを誓約する書面 |
住宅の登記事項証明書 |
「入居者の募集が行われている家屋」を証明する書類 |
「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」を証明する書類 |
住宅の図面 |
賃借人や転借人の場合、民泊運営を承諾されたことを証明する書類 |
区分所有の建物の場合、規約の写し |
管理組合に禁止する意思がないことを証する書類 |
委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し |
ここでは、それぞれの書類について解説していきます。
届出書
届出書は、自治体のホームページからダウンロードできます。記入内容は、名前や住宅に関する事項などです。
届出書は届出をする際に必ず必要な書類なため、忘れずに準備しておきましょう。
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
破産していないことを証明する書類で、3ヶ月以内に発行した身分証明書のみ有効です。
証明書は本籍地の役所で取得しなければいけませんが、マイナンバーカードを持っていればオンラインで手続きができるエリアもあります。
未成年者で、その法定代理人が法人である場合は、その法定代理人の登記事項証明書
届出を行うのが未成年者で、その法定代理人が法人の場合は、法定代理人の登記事項証明書も提出します。
欠格事由に該当しないことを誓約する書面
民泊新法が定める7つの欠格事由に当てはまらずに、健全な民泊運営を行うことを誓約する書類です。詳しい欠格事由については、こちらをご覧ください。
住宅の登記事項証明書
登記事項証明書には、不動産の所在地や所有者などの情報が記載されています。法務局で取得でき、証明書の発行には600円かかります。
「入居者の募集が行われている家屋」を証明する書類
申請する物件が賃貸住宅の場合は、入居者の募集が行われていることを証明するものが必要です。物件サイトの募集ページや不動産会社が出している張り紙のコピーで、問題ありません。
「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」を証明する書類
これは、別荘やセカンドハウスといった年に1回〜数回ほど利用する建物を指します。セカンドハウスや別荘を持っていない場合は該当しないので、書類は不要です。周辺で買い物をした際の領収書や高速道路の料金がわかるものを、証明書類として提出できます。
住宅の図面
住宅の図面には、以下の情報を記載しなければいけません。
- 台所・浴室・トイレ・洗面設備の位置
- 住宅の間取り及び出入り口
- 各階の別
- 居室、宿泊室、宿泊者の使用に供される部分(宿泊室を除く)のそれぞれの床面積
- 非常用照明器具などの安全確保のための措置の実施内容についての明示
(参考:民泊制度ポータル制度)
図面は、保健所に行って指示を受けると作成しやすいです。
賃借人や転借人の場合、民泊運営を承諾されたことを証明する書類
賃貸物件を借りて民泊をする場合は転貸になるため、物件での民泊運営を所有者が許可したことを証明する必要があります。
後々トラブルに発展しないように、許可を得たことを必ず書面で残しておきましょう。
区分所有の建物の場合、規約の写し
区分所有の建物は、アパートやマンションのことです。各マンションの管理規約には民泊ができるかどうかが記載されているため、規約をコピーして提出します。
もし規約で民泊が禁止されていると、運営ができないので注意しましょう。
管理組合に禁止する意思がないことを証する書類
規約に民泊に関する文章が明記されていない場合は、管理組合に許可をもらい意思確認の証明書類を作成します。
物件を探す際はマンションの規約に目を通して、管理組合に問い合わせて民泊ができそうかどうかをまずは確認するのがおすすめです。
委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し
民泊管理業者に運営を委託する場合は、契約書の写しも必要です。これは、管理業者と契約を結んだことの証明になります。
法人の場合
法人の場合は、個人で申請する際に必要な書類と合わせて以下の書類も用意しましょう。
定款又は寄附行為 |
登記事項証明書 |
役員が破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書 |
定款又は寄附行為については、商号や事業目的、事務所の所在地などが登記事項証明書の内容と一致しており、効力を有するものである必要があります。
登記事項証明書は自社のものを提出します。
民泊の許可申請に必要な費用
民泊新法で届出をするのにかかる主なコストは、以下の3つです。
消防設備の設置 | 数万〜数十万円 |
登記事項証明書 | 600円 |
身分証明書の取得 | 300〜350円 |
全ての手続きを自分で行うのであれば、届出にかかる費用は少額で済みます。手続きを自分でやるのが不安な方や早く済ませたい方は、行政書士や管理業者に委託する方法もあります。
委託費用は25万円程度が相場なので、予算に余裕がある方は検討してみても良いでしょう。
消防設備にかかるコストは、運営タイプや物件の規模によって値段に大きな幅があります。事前に調べて、届出にかかる費用を計算しておきましょう。
まとめ
民泊で届出を出すには、まずは要件をクリアしているかを確認したり転貸の許可を得たりする必要があります。消防法令適合通知書を始めとした書類を用意する時間も考慮して、早めに準備に取りかかりましょう。
準備をする前に保健所に行って相談をすると、やるべきことや用意するものが具体的にわかるため、保健所の積極的な利用もおすすめです。
民泊の届出をする際は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。